研究概要 |
可変ダンパ機構を有するセミアクティブアクチュエータのモデリングを検討した結果,可変バルブ機構を有するダンパモデルを構築した.これはオリフィス部のサーボ弁を開閉することで減衰定数が線形に変化することを想定し,かつ,そのバルブ開度には非線形ばねにより制約を与えたもので,これまで提案されていない新しいモデルである.シミュレーション上で車両用サスペンションへの適用を行い,可変ダンパモデルを取り入れた線形パラメータ変動系を導出し,ゲインスケジュールド制御系設計を行った.その結果,減衰係数のなめらかな切り替えが行われ,所望の制御性能を有することを示した. さらに,磁気粘性流体を用いたいわゆるMRダンパによるセミアクティブ制御に提案手法の適用を行い,振動絶縁制御実験による検証を行った.まず,MRダンパの駆動電流と減衰係数変化の関係を実験的に求めた.MRダンパのストロークをレーザ変位系で,減衰力を圧力センサーで計測し,これらと駆動電流の関係から,ストローク速度の0.2乗に比例する関数に近似した.そして,先に提案したゲインスケジュールド制御系が出力する減衰係数に減衰係数可変領域内で一致するよう駆動電流を与える方法をとり,制御実験を行った結果,提案手法の有効性を確認することができた.また,カルマンフィルタの適用により,ダンパストローク速度の推定が行えることを実験で確認した. 一方,4層構造物へのセミアクティブ制御の適用を検討した.4層構造物を2次モードで打ち切る低次元化を施し,低次元化モデルに対してセミアクティブ制御系設計を行った.その結果,減衰係数の変動幅が比較的小さい場合については,良好な制御が行えることをシミュレーションにより示した.また,減衰係数の変動幅を大きくした際に,速度の正負による制御器の切り替えによる高次モードの励起が生じることを見いだした.今後はこの問題に対処して行く.
|