研究概要 |
人間と空間を共有するヒューマノイド・ロボットが安全性・作業性能の向上のために柔らかさを持つことが必要とされている.しかし,どのような状況で,あるいはタスクに対してどの程度の柔らかさが要求されるのかという評価基準は明確にされていない.本研究ではまず,コンプライアンスの概念を周波数領域に拡張したダイナミックコンプライアンスによって,タスク・安全性に必要な特性を表現した.次に,希望のコンプライアンス特性をメカニカルなコンプライアンス(パッシブ)とフィードバックによるコンプライアンス(アクティブ)の2つで実現した.特に後者では周波数領域での補償器設計法であるロバスト制御則を用い,パッシブとアクティブの両方の利点を生かしたハイブリッドコンプライアンスを実現する.これにより,タスクや安全性とコンプライアンス特性の関係が明確化され,されにこの特性を実現する体系的な手法を確立することで,コンプライアンス制御の新たな指針だけでなく,ヒューマノイド・ロボットに柔らかさを導入する有効性が示されることによって新たな機構設計の展開をもたらす.一方,コンプライアンスを有効に利用することはロボットの運動性能の向上につながる.具体的には柔らかなリンクにポテンシャルエネルギを蓄え,これを一気に放出することでモータだけでは出力できないパワーを瞬間的に得ることができる.本研究では,コンプライアンス制御の応用として,エネルギの蓄積と放出の制御を行うことにより得られる新たな性能を力学的技量と呼び,これがロボットの力学特性に依存した能力を発揮することを示した.また,この設計論を上半身型のヒューマノイド・ロボットに応用し,素振り動作に置いて大きな速度を得るための軌道計画方を提案した.
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