研究概要 |
下肢機能が衰えがちな高齢者の坑重力動作の内で最も下肢に負荷のかかる立上り動作の支援を考究した。欧米の椅子・ベッドの生活と比べて,我が国のように床まで腰を下ろして座る場合には,椅子の高さまで腰高を上げるのに,極めて大きな負荷がかかる。しかしながら,単純に機械力で持ち上げてしまうことは,自ら立上り動作をしなくなるために,ますます下肢機能を低下させる。これを抑止するために,ハードとしては,自然な立上りに追従した動作で立ち上がりやすくして,下肢への負荷を軽減する立上り機構を開発することを追及した。特に床から腰高までの立上りには,関節を大きく曲げて体重移動しなければならないことが立上りを困難にさせているので,脚を伸ばした状態で腰高を上げること,およびその後は,立上りに必要な前傾を強めて重心を前に出し,自分の脚に体重を乗せる動作に容易に移らせることを実現する機構を開発した。また,個体差および経年変化に簡単な調節で対応できる機構を単一のアクチュエータのみで実現した。またソフトとしては,日常の動作の中で無意識の内に努力させ,残存能力の維持,さらには向上を図るように、自力で肱掛けを引いて立上がる努力を続けさせ,立上がり機能の維持および向上を目指すために,努力を評価して疲れは考慮するが怠けさせないアシストアルゴリズムの創出を考究した。 得られた主な結果は,次のとおりである。 (1)リニアアクチュエータを用いて完全立上り姿勢まで追従できる構造を案出し,設計試作した。 (2)ヒトが着座したときの各部材への作用力および所要駆動力を明らかにした。 (3)部材重量を考慮して各部材への作用力および所要駆動力を明らかにした。 (4)努力評価量をアクチュエータに帰還して速度制御する努力支援型のパワーアシストアルゴリズムのプロトタイプを構築した。 (5)立上りパワーが努力評価の指標に妥当であることがわかった。 (6)実用上は肘掛け作用力で努力評価できる可能性のあることがわかった。
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