研究概要 |
本研究では,運転者の旋回意図を車両軌跡の曲率指令値として表現するドライバモデルと,車両の目標運動を横加速度とヨーレートの線形和として表現するD^*制御の概念により,ステアバイワイヤによる前輪アクティブ操舵について検討した.走行軌跡曲率を指標とする操舵制御の実現においては,D^*制御系を構成要素として,車速に応じて目標曲率をD^*値に変換する方法を用いている.初年度(平成13年)は,このような操舵制御系と曲率出力型ドライバモデルの基本形,市販の多自由度車両モデル(CarSim)を組み合わせることで,目標軌道の追従走行シミュレーションを行った.現実的な観点から曲率指令方式について検証を行い,急減速時の巻き込み防止などについて所定の機能と性能を確認した.初年度に開発した曲率制御を指標とする操舵制御系を前提として,14年度はドライバによる操舵を表現する数学モデル(ドライバモデル)に関する研究を続けた.形式的には,従来の前方注視点モデルと類似した枠組みであるが,車両のダイナミクスを直接に扱うことなく,車両制御器の介在により指定した曲率,あるいはその変化率が実現されるとして挙動予測を行うため明快な取り扱いとなっている.シミュレーションにおいては,刺激応答時間,車両,操舵系の遅れ,位相進み補償による影響などについて検討した.人工現実感技術を応用したリアルタイムシミュレータの被験者実験により機能検証も行った.13年度は,前輪アクティブ操舵に限定してきたところを,14年度は制動・駆動力配分を包含する統合化について検討した.車両の横滑り角が過大となるような危険な状態を回避する事故回避性(アクティブ・セーフティ)の観点からこのような方式の有効性を確認した.
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