研究概要 |
本研究では,小型のツイストローラ摩擦駆動装置を組み込んだ位置決め機構を製作し,この機構の位置決め分解能の限界を明らかにしている.位置決め機構を温度変化や外部振動を抑制した環境に設置し,ツイストローラ摩擦駆動装置の駆動軸を圧電素子および「てこ」を用いた微動機構によりわずかに回転させた.微動機構を使ったことにより圧電素子の変位は約1/2000に縮小されてテーブルを変位させることになる.圧電素子の変形範囲は20μm程度であるので,テーブルの位置決め範囲は10nm以下である.このテーブル位置を光ファイバ変位センサにより検出し,フィードバック制御システムにより圧電素子の変位を修正することでサブナノメートルの位置決め分解能をめざした.位置決め範囲がきわめて狭いことより,転がり接触状態はきわめて再現性の高い「線形ばね」とほぼ見なせ,高精度の位置決め制御が可能であることが分かった. そこで,この位置決め機構の位置決め分解能の限界を探るために,テーブル変位を光ファイバ変位センサにより検出し,圧電素子への印加電圧を修正するフィードバック制御システムを構築した.コントローラにはパソコンを用い,PI制御アルゴリズムをC言語により作成した.変位センサの出力をパソコンに取り込むAD変換器は16ビットで,LSB(最小ビット)は約76pmに相当し,これが入力側の変位分解能となる.一方,圧電素子への印加電圧の出力に用いられたDA変換器も16ビットで,こちらのLSBは約0.15pmとなる.したがって,入力側分解能は目標とする位置決め分解能に比べて大きくなっている.そこで,PNM(パルス数変調)方式を採用し,入力側の変位分解能を下回る分解能での制御を可能とした.このような処理を含めたこの制御システムのサイクルタイムは実測により約30μsであった. このフィードバック制御システムを用いて1nm,0.5nm,100pm,50pmなどのステップ幅での位置決め実験を繰り返した.その結果,最小50pmのステップ幅での位置決めを再現性良く達成できた.つまり位置決め分解能の限界は少なくとも50pmであると言える.今後はこの研究成果を踏まえ,テーブルの移動範囲を広げてピコメートルレベルの「超精密位置決め技術」の確立を計る
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