研究概要 |
機械工学の分野で数多く見られる接触回転系では,運転中に構成要素の変形が自励的に成長するのに伴って系全体に大きな振動が発生し,接触面に周期的なパターンが形成される現象がしばしば生じる.このパターン形成現象に対する従来の解析手法は,線形時間遅れ系の特性根を直接求めて安定性を判別するものであるが,その計算手続きは煩雑で,大規模系に対する防止対策への応用には不向きである.そこで,これまでの研究において,モード解析の概念を導入することにより,多自由度系に対する特性方程式をモード毎の1自由度の特性方程式に近似することで,従来の解析手法上の難点を克服してきた.さらに,系内のエネルギー収支を評価することで,特性根を求めることなくモード別の安定判別を比較的容易に推定できるようになった. これらの研究成果を踏まえて,平成13年度には,回転軸の長手方向の曲げ変形を考慮した3軸ロールモデルおよびControlled Damper Roll(以下,CDR)を付加した2軸ロールモデルを対象として,上記の簡易安定判別法の適用範囲を拡張した.3軸ロールモデルは抄紙機等にみられる多段ロール系の最も基本的なモデルであり,CDRは長手方向の曲げ変形が原因となってパターン形成現象が生じる系の防止対策に有効なロールである. 平成14年度には,上記の簡易安定判別法に最適設計の概念を融合することにより,大規模系におけるパターン形成現象を防止する最適な設計パラメータを合理的かつ効率的に求める手法を開発した.一方,これまでの研究によって,パターン形成現象の全体像を解明するとともに抜本的な防止対策を立案するためには,系内に不可避的に含まれる非線形性の影響を考慮する必要のあることが認識されてきた.その基礎的研究として,粘弾性変形や研削に基づくパターン形成現象の最も単純なモデルである1自由度非線形時間遅れ系を取り扱い,その振動特性を解明した.
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