研究概要 |
本研究課題では,圧電素子を含む外部電気回路による振動制御について数値的な検討を行った。機械振動系と電気回路系を統一的に扱う手法として,機械振動系を電気回路に変換する等価回路法を採用した。有限要素法をベースに,モーダル解析の手法を導入することで等価回路定数を算出した。 まず,縦効果振動子ついて解析解と本手法の結果を比較検討した結果,等価回路定数と解析解は誤差範囲内で一致し,本手法の妥当性が示された。さらに,隣接モードとの結合が弱い場合は1自由度等価回路であっても十分な精度で近似できることがわかった。薄板の圧電振動子について簡単な実験を行ったところ,等価回路による推定結果と実験はほぼ一致し妥当性が示された。 振動制御については,受動・能動の両制御法について検討した。まず,受動制御では薄い梁に圧電素子を貼り付けたモデルについて数値実験を行った。その結果1)圧電素子につなぐ抵抗には最適値が存在し,回路のインピーダンスとマッチングするように決定する必要がある。その場合,系全体の等価的な損失係数は圧電素子の容量比によってほぼ決定される。 2)構造体と圧電素子を損失係数の大きな接着剤で接着した場合,接着層が拘束型制振材料として作用するため,振動エネルギーの多くが負荷抵抗ではなく接着層で消散される。 などのことが示された。最後に,能動制御について数値実験を行った。先の受動制御モデルにセンサとアクチュエータを設置し,センサからの信号を増幅器で増幅後,負帰還でアクチュエータにフィードバックするモデルを考えた。フィードバック系の特性と安定性を検討したところ1)系の安定性は,増幅度とセンサ・アクチュエータの力係数で決定される。 2)系が安定であれば,系全体の見かけ上の損失係数は増幅度に比例して大きくなるが,この場合もセンサの容量比に支配される。 などのことが示された。今後は,より実際の系についての検討および実験による検証が必要となろう。
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