研究概要 |
C型パンチプレスに代表される厚い鋼板を溶接で組み合わせた構造物は振動減衰能が小さく,振動・騒音の問題を惹起しやすい.そこで粘弾性体によって減衰を付与するために動吸振器のような意味での調整が不要のダンパーを考案した.これは重りと剛性による拘束の機能を兼用した板の寸法と同程度の長さを持つ金属棒と板とを多数の粘弾性ばねで連結して,板の振同時に金属棒と板の相対変位によって粘弾性ばねに変形を生じさせ,ひずみエネルギーを熱に転化することによって振動を減衰させるものである.研究ではまずこのアイディアが実際に機能することを確認するための実験を行った.1000×600×10のステンレス鋼板と2枚の20×8×1000の黄銅平板の間を天然ゴム,軟質ポリウレタン,シリコンゴムなど数種類の粘弾性体で連結して周波数応答と衝撃応答の測定を行った.基本的にどのような組み合わせでも減衰を高めることはできたが,中でもシリコンゴムを用いた場合がもっとも顕著な効果が得られた.これは物質によるのではなく,板,重り兼拘束用棒および粘弾性ばねの寸法と物性定数の組み合わせに最適なものがあることを意味している.この最適値な組み合わせを計算で予測する方法が必要となる.そこで板とダンパーの結合を表現するために集中荷重による板の強制振動とその関連問題について理論的に扱った.本来の目的である無調整ダンパーの設計の指針については指呼の距離まで迫っていると考えられるので,引き続いて検討を重ねていく予定である.
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