研究概要 |
小型のスター型遊星歯車装置では,中心に位置する太陽歯車軸が軸受をもたず,太陽歯車の回りに配置された遊星歯車との間での力のつりあいによって支えられている浮動歯車となっている場合も多い。浮動太陽歯車軸のセルフセンタリング機能に関しては,そのメカニズムは力学的に解明されていないように思われる。また,このようなガタを含む軸継手では太陽歯車にさまざまな振動が発生する。しかしながら,それらの振動に対しては対処療法的な対策が取られてきただけで,振動の原因を理論的に解明しようとする努力が少なかった。 本研究ではこの起動時のトルクがほとんど働かず回転数が上昇する時に発生することがある原因不明の振動を実験実験的に明らかに刷ると共に,その発生メカニズムを考察することにより運動方程式を考察し今後の開発における事前シミュレーションが可能なプログラムを開発することを目的としている。 研究の結果,(1)バックラッシより太陽軸の可動範囲は計算できる。 (2)セルフセンタリング軸跡は太陽歯車が周囲を囲む遊星歯車と作用しているトルクに応じ次々とかみ合い歯面を変化させ,折れ線として求まる。 (3)振動に対し,15自由度の非線形方程式が提案され計算結果が実験と比較された。各運動の自由度に対して粘性減衰力が作用し,加振トルクはモータの回転速度の3倍に同期したモータの変動トルクを仮定した。以上の仮定で計算された結果は装置各部の振動計測結果と良く一致する。 (4)浮動太陽歯車の大きな振幅の横振動は歯車の歯面分離を伴う回転軸系のねじり共振により発生している。計算された各要素の振動波形は実験結果とよく一致する。 (5)作成されたプログラムのばね定数,慣性モーメント,質量等を変更し振動発生状況が変化することにより実機設計での事前検討が可能となる。
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