研究概要 |
高度道路交通システム(ITS)におけるスマートウェイが対象とする7つのリスクに焦点を絞り,スマートウェイ導入後の交通事故発生リスクに対し,その定量化の方法論を提案し交通事故の低減効果を数値的に示した. まず,対象とする7つの事故種別の一つである右直事故を例に,「人間には許容可能なリスクの最大水準がある」という仮定に基づく最大許容リスクモデルを提案し,運転中に発生する不安全行動を定量化した. 衝突相手車両との危険関係のあり,なし,不明という3種類の認知結果と危険関係の発生確率,危険回避義務違反確率を定義し,許容可能なリスク領域内でそれらの関係を定式化することで,運転者の認知と判断・行動の誤りをモデル化した.そして,このモデルを用いて事故での認知と判断・行動の誤りの比率を理論的に導出し,これが既存の事故データと合致することを示しモデルの傍証を与えた. 次に,この方法論を出会い頭事故に適用し,認知ミスは判断・行動ミスに比して支配的であり事故データとも整合することを示した.また,危険車両を運転者に警報する安全装置を想定し,評価対象の安全装置に対して欠報故障をも考慮し,事故低減のために必要な欠報水準を導出した.その結果,装置に完全従属する運転者には極めて高信頼度の装置が要求され,独立志向の強い運転者には欠報確率が高くとれることを示し,安全装置の危険告知はよいが,安全の保証はすべきでないことを示した. 続いて,カーブ進入時の前方障害物衝突事故にも適用し,現在の技術で実現可能な安全装置の信頼度に限定して交通事故低減効果を定量的に検討した.その結果,全体として事故が減少する場合もあるが,その中に欠報故障による事故増加が含まれることを示した. 最後に,交通事故防止のためのドライビングシミュレータの活用を考え,車速の超過が事故の主因であることに着目し,錯視による車速の抑制効果を定量的に示した.
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