研究概要 |
本研究は,IT機器のさらなる発展のため,短パルスレーザ/短波長レーザによる革新的精密微細加工システムを開発することを最終目的とした.ここでは,そのための基盤研究として行った,(1)レーザアブレーションの分子動力学解析,(2)プリント基板のレーザ穴あけによる樹脂除去の解析,(3)第二高調波発生における変換効率とビームプロファイルの解析,の三つについて,それらの研究成果を報告する. (1)では,研究分担者・大村らが既に開発した改良型分子動力学法を適用して,強度がガウス型分布のピコ秒パルスレーザ照射によるAlのアブレーション現象を解析した.その結果,アブレーションプロセスには二つの形態があることを明らかにした.一つはパルス幅が極めて短いときに生じる爆発的な蒸発であり,もう一つは,パルス幅が比較的長いときに生じる穏やかな蒸発である.蒸発粒子の飛散角度や飛散速度,粒径,粒子数,原子1個あたりのエネルギー,蒸発エネルギーなどがこれらのアブレーション形態に深く関わることを定量的に明らかした. (2)では,プリント基板のレーザ穴あけ加工で重要な樹脂の除去特性について,樹脂の蒸発を考慮した,樹脂と金属の2層から成る一次元非定常熱伝導問題を,有限要素法を用いて解析した.実験結果と比較することで,解析方法の妥当性を検証した. (3)では,第二高調波発生について,非線形光学結晶のレーザ光吸収を考慮した光電場の複素振幅方程式を新たに導出し,結晶中の光波の伝播と熱伝導の連成解析を行った.具体的には,一軸性負結晶KH_2PO_4 (KDP)を想定して,第二高調波発生の変換効率と出力ビームプロファイル,それらに対する温度制御の効果などを定量的に明らかにした.
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