研究概要 |
近年,機械的なナノ加工の加工現象を観察・評価するために,原子間力顕微鏡をナノメートルオーダの加工装置として利用する研究が盛んになされている.本研究では,試料に任意のパターンを形成するための6自由度を持つ高精度な微動機構として,スチュワートプラットフォーム型パラレル機構を微動機構に用いた原子間力顕微鏡を開発し,それをナノ加工機として用いることを目的とする.実施事項は以下の通りである. 1.構造の検討と試作 改良機でも基本的な構造はスチュワート・プラットフォーム型パラレル機構とした.全ての方向に対して対称性が良くなるように設計した結果,移動ステージの固有振動数は各方向とも80Hzであった. 2.運動の校正 姿勢により支点が変化するためさまざまな姿勢でステージの変位を実測し,そのときの指令値と比較した.実測結果より作成した4次の校正曲線を用いて制御した結果,センサの分解能以下の位置決め精度となった.変位のばらつきは,校正なしでも非常に小さかった. 試作したステージを用いて原子間力顕微鏡を構成し,水分子とプローブ間に働く力の履歴であるフォースカーブの再現性を測定することで運動精度を評価した. 3.ナノ加工実験 プローブ支持部形状を変え,大気中でアクリル上にナノ加工実験を行った.短冊形と三角形のカンチレバーでは,三角形のほうがスキャンの影響が現れにくかった.短冊形では,スキャン方向により,カンチレバーのねじれや座屈が生じ,加工誤差となった. 4.粗微動移動機構 一軸の実験装置を製作し,外部負荷および走行面の傾き角の影響などを実験的に解析した.垂直方向でも安定して移動できる条件を明らかにした.また,微動機構のステージ上で移動できるような小型の3自由度粗動機構を製作した.同じ構造を持つインチワーム機構より制御されるアクチュエータの数が少ないが,同様の移動特性を持つという利点がある.
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