研究概要 |
現在,地球温暖化等の問題意識が高まり,太陽光発電がかなり身近なものになりつつある。しかし,太陽光はエネルギー密度が低いため,簡単に手に入り,安全で「日よけ感覚で手軽に設置できる」小形軽量安価な太陽光発電システムの実現と普及を目標に,太陽電池パネルと一体化できる小形軽量のパワーコンディショナーの開発を目的に基礎研究を行ってきた。本研究の実績は以下の通りである。 1.パワーMOSFETによりパワーコンディショナの心臓部である共振形コンバータの基本回路を試作し,パルス幅制御と周波数制御の組み合わせによる出力電圧制御を行った場合のソフトスイッチング(ゼロ電圧スイッチング)動作条件を明らかにした。また,スイッチング周波数の限界は,主としてフォトカプラの応答性によって決まり,現状では500kHz程度が限界であることが明らかになった。 2.コンバータの出力段の回路が,パワーを双方向に伝える能力がない場合には,出力ACフィルタを小形にすると出力電流のひずみが大きくなることが,シミュレーションにより明らかになった。 3.高周波トランス,共振コイルについて,数十k〜数MHz Hzにおいて種々の条件で損失の測定を行い,トランスとコイルの設計パラメータと損失の関係を明らかにした。これにより,損失を考慮したトランス,コイルの設計法および損失の低減法に関する指針が得られた。また,回路の小形化のために,共振回路とトランスを一体化する手法に関する指針が得られた。 4.太陽光発電システムの動作特性を再現性よく調べるようにするために,太陽電池の動作特性を模擬する回路を試作した。この結果,光の変化を模擬する太陽光モデルと組み合わせることにより,フィールドテストに入る前に,最大電力追従制御などの太陽光発電システムの性能を評価できるようになった。 5.太陽電池と小形軽量のパワーコンディショナを組み合わせたシステム全体の試作および実験については,共振形コンバータの出力電流波形改善の検討に手間取り,今後の課題として残された。 本研究は,太陽光発電用絶縁式パワーコンディショナの小形化・軽量化に関して1つの指針を与え,日よけ感覚で手軽に利用できる太陽光発電システムの実現に道を開いた点で有意義と考える。 本研究が,自然エネルギー利用の普及および発展の一助となれば幸いである。
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