研究概要 |
本研究は屋外電力設備に使用されるシリコーンゴムやポリカーボネート等のポリマー絶縁材料の劣化診断を漏れ電流の面から行うことを目的として行ったものである。これまでの研究において当地方のような日本海沿岸の積雪地域では、塩雪による汚損と雪氷による湿潤などの環境による侵害が強くポリマー絶縁材料の耐候性の低下が大きいことが認められている。このことから本研究では,ポリマー絶縁材料に汚損と湿潤を実験糟内で人工的に与え,表面に電界を加えるIEC587耐トラッキング性試験を-20〜25℃の温度範囲において行った。この試験中,材料表面に炭化や侵食を起こし,最終的なトラッキング破壊に至る過程の漏れ電流を測定し,分析を行った。一般に漏れ電流は不規則で断続的に流れる。このときの漏れ電流の振幅の大きさは確かに絶縁体の湿潤と汚損の度合いを判定する上で重要な指標を与えるものであるが,ここでは漏れ電流に含まれる高調波成分についても分析した。 1)材料表面の撥水性が保たれているときは表面にグロー放電が散逸的に発生する。これが下部電極付近に集中するシンチレーション放電に推移するとき,漏れ電流に含まれる第3次〜第9次高調波成分が増大する。これによって放電が破壊につながるシンチレーション放電に変わった事がわかる。 2)ポリカーボネートのような劣化の進展形態がシンチレーション放電発生からトラック(炭化導電路)形成という場合,高調波よりむしろ基本波成分が顕著に増大する。これがトラッキング破壊の前兆となる。 3)シリコーンゴムの場合,シンチレーション放電発生によってトラックは形成されず,材料が分解されて侵食が起こる。侵食が拡大する過程において,もれ電流の高調波成分はやや増加する程度で,ある。この侵食は材料を貫通する極めて危険なもので,このとき,漏れ電流は一時中断するのでこれが破壊のシグナルとなる。 4)低温環境においては漏れ電流の大きさは常温よりも小さいにもかかわらず,耐トラッキング性が低下する。このとき微小なグロー放電が頻発し、1〜4kHzのパルス性漏れ電流としてあらわれる。
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