研究概要 |
磁性体の表面磁気異方性については未知の部分が多く,巨大な表面磁気異方性を実現する為の指針が明らかでない.そこで本研究では先ず理想的な多層膜を用いた系統的表面異方性測定を行ない,次いでナノ粒子系における表面異方性の影響を調べた. (1)3d遷移金属/Pd、Pt界面における表面異方性 3d遷移金属のPd, Pt界面における表面異方性を調べた.表面異方性はCoの価電子数で最大を示し,第一原理計算と一致した.また,最大の表面異方性を示すCoを主体として,スピン軌道相互作用の大きい4f元素の添加を試みた.その結果,微量のSmにより,異方性が1.3〜1.5倍に強調されることが判った. (2)3d遷移金属/非磁性酸化物界面における表面異方性 3d金属/非磁性酸化物多層膜を形成し,表面磁気異方性を系統的に調べた.表面磁気異方性は価電子数に強く依存し,第一原理計算と同様の傾向を示した.具体的に,表面磁気異方性はFe, Co付近で最大となり,0.5〜0.8erg/cm^2であった.この値はバルクの結晶磁気異方性よりも一桁以上高い. (3)グラニュラー膜中のナノ粒子の表面磁気異方性 超高密度記録材料として有望なナノグラニュラFe/SiO_2を作製し,その保磁力がバルクから期待される保磁力〜120Oeよりも非常に高いことを見出した.上記(2)で得られた表面磁気異方性〜0.5erg/cm^2を用い,粒子径に対する保磁力挙動及び絶対値を完全に説明することができた. (4)ナノ磁性粒子における表面磁気異方性の影響 独自の気相凝縮により作製した完全孤立系Fe, Co, Co-Pt, Niナノ微粒子の磁気挙動を調べた.その結果,それらの粒子の磁化は,バルクよりも遥かに高い有効磁気異方性の下でコヒーレントな挙動を示すことが確認された.この高い有効異方性は表面異方性に起因するものであり,明らかにナノ磁性体における表面効果の重要性を示している. 以上述べたように,Fe, Co, Niといった磁性金属は非常に高い表面磁気異方性を示し,表面の影響が支配的なナノ粒子系に於いて,有効磁気異方性を強調することが確認された.この結果は,急激な微粒子化が進む超高密度メモリー材料に表面磁気異方性を利用することの有効性を示している.
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