研究概要 |
アルミニウムを硫酸水溶液中で陽極酸化して形成したアルマイト皮膜には直径15nm程度の微細孔が間隔40nm程度で表面に垂直に開いている.この微細孔の中にコバルト・白金合金等を充填することによって垂直磁化膜を作製した.まず,コバルトと白金を含む浴を用い,電圧パルスを印加して微細孔の中にコバルト・白金合金を析出させた.パルス電圧が高くなるほど析出合金中のコバルトの割合が高くなった.垂直磁化曲線の角形比は0.6から0.7の値であった.しかし,白金下地を付けると角形比が著しく改善され,0.9前後の値が得られた.白金下地を付けると保磁力も向上した.白金下地はコバルト・白金合金の結晶配向性を変え,垂直磁気異方性定数を大きくすることがわかった.下地の効果をさらに調べるために,白金下地と銅下地の上にコバルトを成長させた.下地を付けないときの保磁力は1.6kOeであったが,白金下地を付けると2.5kOe前後まで改善された.銅下地の場合にも2.0kOe程度まで向上した.角形比は白金下地でも銅下地でも最大0.95まで改善された.銅下地よりも白金下地のほうが保磁力の改善効果が大きいことの原因についてはさらに検討が必要である.さらに,鉄と白金を含む浴を用いて微細孔中に鉄・白金合金を充填した.浴の組成とパルス電圧を変えることにより,析出する合金の組成を制御できることがわかった.垂直磁化曲線の保磁力は析出合金の鉄含有量が高くなるほど大きくなった.角形比も析出合金の鉄含有量が高くなるほど高くなった.鉄と白金をほぼ等原子比で含む合金が析出していると思われる試料を熱処理すると保磁力が大きくなった.しかし,熱処理後も鉄・白金規則合金の生成にはいたらなかった.この原因として,合金組成の分析精度が低く,組成がずれていることが考えられる.
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