研究概要 |
昇圧形スイッチトキャパシタ(SC)電源の場合,半導体スイッチをON/OFFするのに,各スイッチのソース電位は電源電圧より高いことが要求されます.一般には,この種のスイッチにはPチャネル形MOSFET似下,P-MOSFETと略記)を用い,駆動回路の簡略化を図りますが,P-MOSFETの特性として,ON抵抗が大きく,特に最終段では,パワーロスの増加が無視できなくなります.そこで,ON抵抗が小さく,飽和電圧も小さなN-MOSFETを用い,リング形SC電源の特性を活かした駆動回路(最終出力電圧より大きな電圧を得る)を提案することによって,高効率の電源が得られました.3段のSC電源の実験結果では,92%の高効率と30%以上の出力電圧の改善が得られました. また,電源負荷が無くなった時,直ちに動作を止め,節電状態に入ることで,特にモバイル機器では電池の消耗を最小限にすることが出来ます.リング形電源についての節電回路も提案し,それらの実験結果やシミュレーション結果を次の国際会議で発表しました(ITC-CSCC 2002,The 2002 International Technical Conference on Circuits/Systems, Computers and Communications,タイ国). モバイル機器の表示器のバックライトとして,エレクトロルミネセンス(EL)は有望視されています.そのような目的に使用するためのSC電源チップを構成しベアチップを試作しました.出力を補強するための0.1・Fキャパシタ4個を外付けした状態でも,6.8mm角,厚さ3mmと非常に薄く小さな電源回路が得られることが分かりました.MOSFETのチャンネル構造から応用範囲はかなり限定されますが,低ノイズ極小容積を持つ電源が得られることが分かったことは,大きな成果と考えます.
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