研究概要 |
過飽和H_2SiF_6水溶液を用いる液相成長(Liquid-Phase Depositioi, LPD)法により23℃で形成したフッ素添加酸化シリコン(SiOF)薄膜をコア層に、有機スピンオングラス(SOG)薄膜をクラッド層に用いる薄膜光導波路において、LPD-SiOF薄膜形成初期における表面分析結果から、有機SOG薄膜表面の屈折率低下が伝送損失増加の一因であることが判明した。コア層,クラッド層にそれぞれ、LPD-SiOF薄膜(屈折率:1.43,厚さ:1.16μm),有機SOG薄膜(屈折率:1.41,厚さ:1.34μm)を用いたスラブ型薄膜光導波路伝送損失の波長依存性評価の結果、波長範囲532〜834mmで伝送損失が約2〜9dB/cmであった。また、選択成長LPD-SiOF薄膜グレーティング(ピッチ:4μm,厚さ:0.1μm)を用いた光結合・導波を確認した。 薄膜光導波型熱光学(TO)デバイスについては、LPD-SiOF薄膜,有機SOG薄膜の屈折率温度係数が、それぞれ-4.0×10^<-6>/℃,-60×10^<-6>/℃であり、従来の溶融石英ガラスの温度係数(10×10^<-6>/℃)に対して、負の値をとることがわかった。上部クラッド層をそれぞれ空気,有機SOG薄膜とした2層構造,3層構造のTOデバイスの応答時間は、薄膜ヒータ面積の減少に伴い減少し、2層構造では、薄膜ヒータ面積0.02mm^2で立上り,立下り時間が、2.4msec,4.1msec,消光比16dB,半波長電力2.78Wが得られた。3層構造の応答時間は、2層構造に比べて約2桁改善され、従来のSiO_2薄膜TOデバイスよりも高速動作が期待できる。3層構造では、薄膜ヒータ直下で導波できるため、導波光幅や光軸ずれの影響などを低減でき、自由度の高い光学デバイス設計が期待できる。
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