研究概要 |
本研究はで、アダプティブアレーアンテナによる高精度かつ超高速な到来波推定を行うことを目指し、高速アルゴリズムについての検討およびディジタルデバイス上での実装を行った。 まず、到来波推定問題で不可避となる固有値問題について、代数演算を適用して固有値・固有ベクトルを導出するアルゴリズムを提案し、その効果を検証した。本研究では、一般的なQR分解法で固有値を導出するのではなく、低次代数方程式を解く問題に帰着させることで、計算時間を大幅に短縮させることを可能にした。次に、MUSIC法やESPRIT法など、既に提案されている代表的な到来波推定アルゴリズム6種について、ディジタル回路での演算を前提とした場合の推定精度の評価を行った。従来、ディジタル化を前提としない場合にはESPRIT法などの推定精度が高いと考えられていたが、様々な観点からのシミュレーションの結果、Unitary Root-MUSIC法が最も適しているとの結論を得た。 さらに,Unitary-MUSICをはじめとする様々な到来波推定アルゴリズムを,FPGAをベースにしたディジタルデバイス上に実装し,その演算精度と計算速度を評価した.固定小数点演算であることから演算精度に制約があり,かつ乗算などの複雑な演算に時間がかかることから.乗算を減らし,固定小数点演算でも精度が上がる工夫を行った.結果として,1回の推定に要する時間は数十マイクロ秒と極めて短くなり,リアルタイムでの到来波推定技術の基盤となり得るディジタル技術を確立した.
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