研究概要 |
本研究は,ディジタルビームフォーマ(DBF)を基盤構成とした,次世代の直交周波数多重分割(OFDM)方式高速無線アクセス通信における高機能・高性能アンテナシステムについて研究開発するものである.平成13年度から2年間にわたり,OFDM伝送方式において周波数選択性フェージングの克服と干渉の除去を行うアダプティブアレーまたはスマートアンテナを提案し,その特性解析を行った.具体的な成果を以下に示す. 1.マルチキャリア既知包絡線アルゴリズム(MC-KMA : Multi-Carrier Known Modulus Algorithm)を用いたアダプティブアレーについて検討した.MC-KMAは,マルチキャリア信号からなる周波数データを利用するもので,所望波を含むOFDM信号のガードインターバル以内の到来波すべてを受信し,その他の波を抑圧するアルゴリズムである.ガードインターバル以内の波をすべて受信することによって,所望波の受信電力が上がるため,受信特性の向上が確認できた. 2.OFDM伝送における適応等化技術について,再帰型ESPRITを用いた適応等化方式を提案し,その特性を計算機シミュレーションにより検討した.これより,静的環境下,レーリーフラットフェージング環境下において,ほぼ理想状態に近い特性を得ることができ,本方式の有効性を確認することができた. 3.ガードインターバルを越える遅延波などの不要波が到来した場合,OFDMの直交性が漏れることに着目し,データを伝送しないサブキャリアを挿入する最適化方式を提案した.不要波が到来した場合,このサブキャリアに何らかの信号が表れる.このサブキャリアに対して拘束付電力最小化を施すことでアダプティブアレーの最適化を行った.このアルゴリズムをそのシステム構成より,共通ウエイト制御,独立ウエイト制御の二つに分類し,それらの特性を比較検討し,今後の発展につながる重要な知見を得た. 4.サブキャリア単位でMMSE(最小2乗法)アダプティブアレーを動作させる場合において,パイロット信号(参照信号)が全てのサブキャリアに挿入されていない場合でも,各サブキャリアでMMSEアダプティブアレーを動乍させる方式を提案した.これは信号処理による内挿を用いることで実現できる.計算機シミュレーションの結果,全てのサブキャリアにパイロット信号が配置されている場合とほぼ同等な特性を示すことが分かった.
|