研究概要 |
本研究では,平成13年度から平成14年度の2年間の補助金を受けて高層ビル床面上における歩行人体の帯電機構を解明し,電位減衰特性を定量的に把握することに成功した.研究成果の概要はつぎのとおりである. 平成13年度においては,床面に誘導された電荷による床面電位を予測する等価回路を新たに提案し,その有効性を実験で検証した.従来困難であった足跡面電位に関しては,先に申請した回転セクター型携帯用電位計を複数個一列配置した2次元足跡面電位計を設計・製作し,これによって足跡面電位を測定した.得られた時間推移の電位波形と等価回路から導かれた回路方程式による数値シミュレーションの結果とを比較したところ,靴を蹴り上げてからの床面上における床電位の時間変化は同じ傾向を示すことがわかった.この結果から,着地側の靴からの床面への電荷の漏洩だけでなく,蹴り上げた靴の足跡面上に誘導された床面電荷の漏洩過程に関しても等価回路で予測し得ることが明らかとなった.しかしながら,平成13年度に製作した足跡面電位分布測定装置の動作不備から足跡面電位が正確に測定できず,それ故に提案等価回路の定量検証には至らなかった. 平成14年度においては,足跡面電位装置を再設計・製作する一方,電荷漏洩過程を表す等価回路を再度検討し,床面電位の測定値との対照から足跡面電位の等価回路の有効性を検証した.まず,帯電人体が片足を上げた際の足跡面上の電位を表す計算式を人体電位と同じくラプラス領域上で導出し,数値逆ラプラス変換で電位を数値的に求めた.一方,人体電位と床電位は,回転セクタ型電位計(電位計)を用いた電位測定装置で人体の充電電圧をパラメータとして同時測定した.等価回路から導かれた回路方程式による数値シミュレーションの結果と測定で時間推移の電位波形とを比較したところ,人体電位の初期電位(充電電圧)で規格化した電位減衰特性は,充電電圧とはほぼ無関係に同じ傾向を示し,計算値ともよく一致した.一方,足跡面電位の初期値で規格化した電位減衰特は充電電圧に拘わらず計算値とよく一致したが,初期電位は充電電圧とは必ずしも比例しないことが判明した.この原因は,足を上げた際に靴底と床面との剥離帯電で発生した電荷が床容量を新たに充電することで床電位が変化するのであろうと推察されるが,その確証はない.歩行に伴う床面上の発生電荷とその動的振る舞いを把握することが今後の課題となる.
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