研究概要 |
ホームネットワークの需要が近年高まっており,新たな線路の敷設が不要な方式として,無線とともに電力線通信が注目されている.ただし電力線は、多分岐配線のためネットワークトポロジが複雑であり,また接続される家電機器のインピーダンスの影響を受けるため,伝送路特性のモデル化は一般に容易ではないとされていた. 平成13年度本研究では、欧米で現在進められている高速電力線通信の標準規格で使用されている,数M〜30MHzつまり短波帯の電力線伝送路の特性を明らかにし,以下の手順で伝送路モデルを作成し、それが妥当であることを確認した.(1)あらかじめ線路の分布定数を求めておき,分岐点間のセグメントを一つの2端子対回路網として、すべての分岐線を2端子対回路網の縦続行列化し,いかなるトポロジでも伝達関数を導出できる方法を考案した。(2)家電機器単体の入力インピーダンスを,集中定数でモデル化しておき、こうした家電機器が,線路のどこに接続されているかを,(1)の線路モデルに与えることで,所望の観測点間での伝達関数を求められるようになった. 平成14年度は特に、信号の伝送モードのうちこれまで利用されていなかったコモンモードに注目し、重信伝送方式を新たに開発した。(a)原理: 従来の屋内電力線通信の場合、100ボルトの線間に信号を重畳し(ノーマルモード)伝送するが、多分岐配線によるインピーダンス不整合や平衡伝送ができない配線形態により、電力線とアース間で電位差を発生する、つまりコモンモードにモードが変換する。本研究では、屋内電力線としてよく用いられる3芯VVFケーブルにおいて、コモンモード変換が起きにくい配線方法を検討し、さらにコモンモードを使って伝送する方式、つまり重信伝送方式を開発した。(b)方式の基礎検討: 受信器側で、ノーマルとコモンの両モードを分離できれば、モード間でのダイバーシティを利用することで、通信容量を増大でき、またデータ伝送の信頼性を向上できる。さらに、送信側で両モードを直交して送出すれば伝送途中でモードが変換しても、分離は可能となるはずである。本研究では、こうした2つのモードの注入と抽出方法を検討し、その効果を実験的に示した。
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