研究概要 |
本研究は,最適化問題に対する準最適解を求めるアルゴリズムとして,近年,注目されている「遺伝アルゴリズム」を用いて,与えられた設計条件(パケット廃棄確率制限,平均パケット伝送遅延時間制限等)の下で,ランダムアクセス無線通信システムの各種パラメータ(パケット再送確率,最大再送回数等)を最適設計するための設計手法を開発することを目的として,平成13年度〜平成14年度の2年間にわたって実施された.特に,ランダムアクセス無線通信システムとして,次世代移動体通信システムにおける実用化が検討されているスペクトル拡散アロハ方式を対象とした. はじめに,アロハ方式が有する不安定性を示すパラメータ領域を明示するために,カタストロフィ理論を用いた近似解析を行った.周波数ホッピング方式,指数バックオフ・アルゴリズム,および再送カットオフを考慮したモデルを構築し,このモデルに対するバランス関数を導出した.そして,カスプ・カタストリフィにおけるカスプ点と分岐集合を数値計算により求め,周波数ホッピング・アロハ方式が双安定で動作する領域を可視化した. 次に,遺伝アルゴリズムによるパラメータの最適設計を試みた.第1ステップの試みとして,周波数ホッピングを行わない従来のアロハ方式に対して,指数バックオフ・アルゴリズムと再送カットオフを考慮した通信システムの設計を行った.しかしながら,遺伝アルゴリズムによるパラメータの最適設計では,周波数ホッピングに関連するパラメータを含めて実施することができないままであった.このため,今後の課題として, ●周波数ホッピング・スペクトル拡散通信方式を利用した場合のパラメータ最適化 ●95%パケット伝送遅延時間等のより現実的な制約条件のもとでの最適化 ●パケット廃棄確率に対する,より精度の高い評価式の導出 等が挙げられる.
|