研究概要 |
移動物体からの電磁波の解析や光・ミリ波デバイスの設計のために振動する境界を持つ場合の電磁界解析が重要な問題となってきている.しかし,従来の数値解析法だけではこれらの問題の解析には限界がある.黒田は任意形状,任意運動に適用できる数値解析法である移動境界適合座標系を用いて様々な数値解析を行い,理論解との比較を行ってきている.この手法は格子生成法に時間因子を導入した座標変換法で複雑な物理座標系を数値計算のための計算座標系に変換した後,FDTD法で数値解析を行う方法である.今回は移動物体の近傍界に注目し,準静止界の他,高速の場合にも適用できるよう2次の近似解までを考慮した座標変換法を用いて解析を行った.具体的には,運動する物体に入射した電磁波の近傍電磁界と静止物体の近傍東磁界の比較を行った.これまで高速の場合にも適用できる時間変換式を導入した数値解析法を提案してきているが,この変換式をさらに検討し,より一般性を持たせた定式化を行った.さらに,もう一方では,この手法をミリ波・準ミリ波通信のための可動電極を持つMEMSデバイスの解析に適用できると考え,研究を始めた.これらの研究成果としては,2001年3月にACES2001(Applied Computational electromagnetic Society),8月にFESS-MMNA2001,2002年3月にACES2002,6月にIEEE APS/URSI2002(Antennas & Propagation Society / the International Union of Radio Science),7月にPIERS2002(Progress of International Electromagnetic Research Symposium),10月に電気学会電磁界理論シンポジウム,11月にAPMC2002(Asia Pacific Microwave Conference)、2003年3月にACES2003で発表した.これらをまとめた論文が2002年5月に論文誌Telecommunications and Radio Engineeringに,2003年3月に電気学会論文誌Aに掲載された.さらに今後の予定としては2003年6月にAP-S/URSI2003,10月にはPIERS2003でも発表予定である.このように,運動する物体に対する電磁界解析が移動通信の分野だけでなく,MEMSなどのミリ波、マイクロ波デバイスの設計にも必要とされてきている手法であるため,これらのデバイスの設計のための数値解析法としてこれから益々必要な研究であるといえる.
|