研究概要 |
今年度は,昨年度からの集積回路の実装設計におけるモジュール配置問題に加えて,新たに組立ロボットの制御と電子デバイスの最適設計を対象とし,提唱している設計論に基づくメタ戦略を適用するとともに,計算機実験を通じてその有効性を検証した.以下に,各研究の概要と成果,今後の展開を述べる. 1.モジュール配置問題 総配線長が最短となるような回路素子の基板上への配置方法を考える場合,そのような配置方法(最適解)は幾つも存在して一意に決まらない.本研究では,複数の最適解を持つモジュール配置問題に対し,今西進化論をアナロジーとする遺伝アルゴリズムを適用することで,構造の異なる最適解から成る集合を求めた.設計者は得られた複数の最適解の構造を比較することで,目的関数(配線長)には反映されない電気的特性などの機能から各最適解を多角的に評価することができる. 2.組立ロボットの制御 能動的な行為によって組立作業を遂行するロボットの制御において,順序機械で定義された動作パターン生成器(APG)の適切な構造を決定するために遺伝アルゴリズムを適用した.また,最適なAPGを内蔵したロボットは環境との相互作用を通じて,各部品の形状やその初期位置の違いを識別するとともに,組立作業の完了を自ら認識し停止できることを確認した. 3.電子デバイスの最適設計 弾性表面波(SAW)フィルタの周波数特性(機能)は,基板上に配置されたすだれ状電極と反射器の形状等(構造)に依存する.本研究では,三電極SAWフィルタの設計を最適化問題として定式化するとともに,k次元近傍に基づく可変近傍探索法(VNS)を適用し,与えられた仕様を満たす周波数特性が実現できることを示した.今後の課題は,VNSと遺伝アルゴリズムを組み合わせることで,最適化手法の大域的な検索能力を向上させることである.
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