研究概要 |
円すい状のX線ビームとらせん走査を組み合わせた『コーンビームヘリカルCT』は将来の高速3次元CT装置の構成方式として期待されているが,この方式の装置構成や画像再構成は研究が開始されて間もなく十分な成果が得られていないのが現状である.本研究では,コーンビームヘリカルCTをより実用的なものとするため,以下の3項目について研究を行った.まず,装置構成方式について研究を行い,検出器素子を効率的に配置しらせんのピッチが大きな高速の走査を実現する新しいコーンビームヘリカルCTの構成方式を開発した.次に,測定データから3次元CT画像を生成する新しい画像再構成法を開発した.汎用のコーンビームヘリカルCT装置に用いる画像再構成法としては,(1)数学的に厳密なラドン逆変換による画像再構成法、(2)リビニングと呼ばれる投影データの幾何学変換に基づく高速な画像再構成法、の2つを開発した.アンジオグラフィーやマイクロCTに代表される血管像などの高コントラスト物体イメージングを目的とした装置に用いる画像再構成法としては,『非線形計画問題の双対性』と呼ばれる数理計画の手法に基づく代数的画像再構成法を開発した.また,これらの画像再構成法を開発する過程において,超ショートスキャン画像再構成法や一般走査軌道のコーンビーム投影データからの厳密な画像再構成法などの,CT画像再構成の基礎に関する新しい知見を得た.最後に,実データによる有効性の検証例として,マルケット大学で開発中のマイクロCT装置に開発した代数的画像再構成法を実装し,一辺が2cmの立方体程度のラット肺血管の構造を8方向という(従来の画像再構成法では困難な)きわめて少数方向の投影データから再構成することに成功した.
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