研究概要 |
電磁波を使った地下探査技術は2つのタイプに分類される.1つは地中レーダーと言われ,地表近くに埋められた埋設物の検出や地下空洞の発見などを目的としている.もう1つはボアホールレーダと言われ,地下深層部の地層の調査,岩盤の亀裂の調査,地下空洞の発見などが目的である.これまでに数多くの研究がなされているが,その殆どは,背景媒質と異なる物体の位置や大きさを推定することにとどまっており,その物体が何であるかを特定できていない.我々は自由空間中にある未知の物体の電気定数(誘電率,透磁率,導電率)を推定する方法としてFBTS法を開発しており,本研究期間においてFBTS法を地下探査に適用できるように拡張しすことを目的としている.本研究期間中の主な結果は次の通りである. (1)FBTS法を地下探査に適用できるように改良した. (2)数値計算により,地中埋設物の比誘電率が推定できることを示した. (3)FBTS法は探査領域が広がるにつれて非常に長い計算時間を必要とするので,比較的短時間で物体の位置が推定できる(合成開口処理)地中レーダの特徴を本アルゴリズムに取り入れることで計算時間を大幅に短縮した (4)観測した電磁界に多くの雑音が含まれる場合は,物体の電気定数の推定が困難になるので,雑音の存在に対しても有効なFilterd FBTS法を提案した. (5)探査領域が広大になり合成開口処理が出来ない場合は,再構成結果は非常に不安定になり,時には失敗する.この改善方法としてFilterd FBTS法にマルチグリッドの考えを導入するアルゴリズムを考案し,計算時間の短縮と共に探査空間の拡大を計ることに成功した.
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