研究概要 |
人は磨かれた物体の表面や塗装面,いろいろな色彩の印刷物を見て美しいと感じる。こうした評価は工業製品の生産ラインでの製品評価でも行われ,官能検査として知られている。こうした人間の感性による評価を客観的な情報どして抽出することは感性計測と呼ばれ、本研究はその一環として位置づけられる。 表面の光学的特性を決める要素に,表面材料の光に対する物性,表面粗さ,そして色彩があげられる。本研究では人の感性に関連する光沢との関係を研究するため,表面粗さを光学的に計測する方式を研究し,表面からの光散乱と明視の度合いの関係を明確にすることを目指す。計測する方式として,レーザ光による回折を含む散乱を用いる方式と,パターンを投影してその明視度を表すコントラストを用いる方式を平行して研究した。これらの計測法による情報にはそれぞれ表面の光学特性の特徴に対応し,それらの情報を融合し,人の感性に対応する情報を抽出することを研究の目標としている。 レーザ光の散乱を用いる方式では,散乱光の分布の特徴を表すパラメータを研究した結果,散乱光分布の積分値が表面粗さと相関があること,欠陥などの種類の識別に用いることができることがわかった。パターンを投影する方式では,表面粗さが小さい場合,パターンのコントラストと粗さの間の一定の実験式で表される相関関係を検出する,ビデオカメラを用いる場合の課題と解決法を考案した。 これらの方式はそれぞれほほ確立段階にあり,表面粗さと光沢感との関連がほぼ明らかになってきたが,光沢と人間の美観に関連付ける研究をさらに進める必要がある。
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