研究分担者 |
石原 茂和 広島国際大学, 人間環境学部, 助教授 (90243625)
松原 行宏 香川大学, 工学部, 助教授 (30219472)
西野 達夫 広島国際大学, 人間環境学部, 助教授 (00104076)
市坪 誠 国立呉工業高等専門学校, 助教授 (50223102)
土屋 敏夫 下関市立大学, 経営学部, 助教授 (10271074)
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研究概要 |
本研究の目的は感性の線形性と非線形性の特質を明確化して,非線形の感性モデルを構築することである.2002年度は以下の研究を行なった. 1.感性の異文化的調査研究 2001年度と今年度に,日本とスウェーデンのリンシェピン大学で同年代の学生を被験者とし,同一の感性実験材料(直方体)で実験を行ない,結果を分析した.その結果,「使いやすい」,「高級感のある」,「飽きのこない」などの言葉で具体的な差があった.例えば,使いやすいでは日本人は極端に高さの短いものと高いものの評価点が低く非線形性があるが,スウェーデン人は全体的に高いほど評価点が高く線形に近い. 2.感性の非線形性を取り入れた感性モデル構築 直方体や飲料の缶,牛乳パック,冷蔵庫の形態比(長さあるいは高さの比),色彩などのデザイン基本要素の感性評価実験を実施した.そのデータを因子分析,数量化理論I類,非線形回帰分析,遺伝的アルゴリズム,ラフ集合解析を用いてさまざまな角度から分析を行なった. (1)感性の意味構造と非線形性:直方体・缶・牛乳パック・冷蔵庫のCGによるモデルを用いた実験データを因子分析と数量化理論I類を用いて分析した.全般的に物理的因子,センスの因子,価値・印象の因子が得られ,物理的因子は形態比に対して線形的な関係があった.一方,価値・印象の因子はある範囲の形態比だけが高い評価で他が低いという非線形な関係があった. (2)非線形回帰分析による分析:直方体の辺の長さをバリエーションとした実験を行ない,線形と非線形の回帰分析を用いて長さと感性の関係式を求めた.感性ワードはMDSとクラスター分析を用いてマッピングと分類を行なった.立方体と最も長い直方体の評価が他よりも極端に高い/低いことで非線形性が生じており,デザイン的調和性・成熟性のワードでは立方体の評価が特に高くなっている.一方「高級感のある」など,黄金比がピークのワードもあった. (3)遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)による分析:GAは回帰分析モデルと異なり,説明変数間の関係に制約がない.この点を活用して明度(グレースケール)と形態比などの説明変数間に交互作用のあるデータを分析した.分析システムは新たに開発した.正方形で白は「高級感のある」などのワードで他の明度よりも評価値が極端に高い.長い直方体で黒は「形が良い」などで極端に高いという組み合わせ効果があった. (4)ラフ集合による分析:ラフ集合を用いた分析方法は,対象属性の組み合わせについて矛盾を最小にして重要度の高い属性集合を求めることができる.この点を用いて色彩サンプルと感性との関係を調べた.色彩の属性はL^*a^*b^*表色系の各4バリエーションがある.また被験者の性別も属性に含めた.結果として,例えば「上品な」色彩は明度・彩度・色相・性別全てに特定の値を持ち非線形性が高く,一方「鮮やかな」は明度と赤・緑の軸だけで決定される.
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