研究概要 |
非線形制御理論における基本方程式であるハミルトン・ヤコビ方程式について,基礎的な解析を行った.まず,ハミルトン・ヤコビ方程式の解析を線形制御理論のリッカチ方程式のそれと対比させながら,解析を行う枠組みとして,シンプレクティック幾何学がもっとも適切であることがわかった.シンプレクティック幾何学の枠組みで定式化された1階偏微分方程式の理論を用いれば,リッカチ方程式の代表的解法である有本・ポッター法(固有値分解法)が自然にハミルトン・ヤコビ方程式に拡張できることを証明した.ハミルトン・ヤコビ方程式を1階の偏微分方程式として解くと,必ずしも制御理論で望むような解が得られるとは限らない.これは,ハミルトン・ヤコビ方程式が複数の解を持つからで,この中から,非線形制御理論で有用な解を得るためには,より深く方程式の構造を探らなければならない.これをシンプレクティック変換の母関数の理論を用いて行った.すなわち,ある解が得られたとき,その情報を用いて他の解をすべて導くようなハミルトン・ヤコビ方程式の隠れた構造を明らかにした.これをリッカチ方程式に当てはめると,ある解が一つあるとき,それを用いて特殊なリヤプノフ方程式を構成し,それを解くことで他のすべての解を構成する固有ベクトル(第一積分)が得ることができることになる.こうして,ハミルトン・ヤコビ方程式を安定化解と関係のある構造と反安定化解と関係のある構造に,二つに分けることに成功した.上記の研究成果は,米国応用数学会(SIAM)の論文集に掲載された.また,2002年のIEEE Conference on Decision and Controlへも招待され,本研究成果を発表した.
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