研究概要 |
本研究では,離散時間確率システムの実現理論と部分空間同定法を応用することにより,フィードバック系に対する新しい部分空間同定法を提案した. 1.同時入出力同定法を採用して,まず閉ループシステムの確定部分に対する一般的な実現理論を与え,ついでシステムへの外部入力rから同時出力y, uまでの伝達関数TyrおよびTurを同定して,G=Tyr/Turという関係によってプラントの伝達関数を同定する部分空間同定法を提案した.成果は,European Control Conference(2001年9月)および40th IEEE Decision and Control Conference (2001年12月)で発表した. 2.閉ループ系に対する部分空間同定法のアルゴリズムの同定精度を評価する数値的方法を提案した.すなわち,与えられた1組の入出力データから同定精度を評価するために,データのリサンプリングによって(仮想的な)ブートストラップサンプルを多数生成して,それに基づいて同定を多数回繰り返して実行し,その平均と標準偏差によって同定精度を評価する方法である. 3.閉ループ系が純ランダムなディザー信号と純確定的な目標値信号(例えば合成正弦波)を受けるより一般的な場合を想定して,プラントとコントローラの伝達関数を同時に同定する方法を提案した.この結果の一部はIFAC World Congress (2002年7月,Barcelona)で発表した.さらに,シミュレーションによって,閉ループ系に対する部分空間同定法の同定精度を例題を用いて数値的に評価し,本研究で提案している直交分解に基づく部分空間法を利用した閉ループ同定法の方が他の部分空間法を用いた方法より数値的に精度が高いことを確認した. 4.部分空間法を閉ループ化学プラントの同定に応用する研究を企業と共同して行い,成果の一部をInternational Symposium on Advanced Control of Industrial Processes (2002年6月,熊本)で発表した.
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