研究概要 |
本研究の目的は,生体が行う複数の異種情報の融合を数理的にモデル化し,異種の情報を有機的に融合するニューラルネットワークの学習モデルを確立し,それを実現する学習アルゴリズムを開発すること,およびその応用を検討することである. まず,「人間の脳が行う情報の融合を数理的にどのようにモデル化するか」を一般的に論ずるのは困難であると予想されるので,解決の糸口を見つけるため,異種の情報に内在する関係が教師データとして与えられる場合を考え,これらの関係を学習することにより情報を融合させる学習法について検討した.すなわち階層型のニューラルネットワークをおよびリカレントニューラルネットワーク対象として,この考え方に基づいた情報を融合する学習法を開発し,そのための効率の良い学習アルゴリズムを導いた.また,複素信号を直接扱うことができるとして最近注目を集めている複素ニューラルネットワークに対しても同様の検討を行った. 次に,異種の情報に内在する関係が教師データとして直接得られない場合に対処するために,対象のモデルを学習ループに内包して学習する方法を考案し,それを実現する学習アルゴリズムを開発した.さらにこの方法を,対象のモデルに不確定さを含む場合に対処できるように発展させるため,対象のモデル自身を学習により獲得する機構を持った情報を融合する学習法の枠組みを検討し,その学習アルゴリズムを開発した. さらに,開発した情報を融合する学習法の応用として,ロボットビジョンにおける陰影画像からの形状復元問題や動き場の推定問題,連想記憶やニューロオシレータの実現問題などに応用する方法を検討した.また,情報の融合がこれらの実際問題への応用にどのように有効に働くかその情報融合のメカニズムを解析し,開発した学習法の性能を検討することにより本申請研究を完成させた.また,今後に残された問題についても整理した.
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