研究概要 |
本研究では,最初に,どのようなオンラインモデリングを行うのか,すなわちモデルの更新方式の問題,そして組み込み方式の問題を検討した.モデル予測制御における逐次決定の方式を発展させた組み込み方式,LPVシステムにおけるスケジューリングパラメータの役割を発展させたモデル更新方式を検討し,検討結果を踏まえて制御問題を定式化した.次に,定式化された問題の解法と解法アルゴリズムの提案を行った.ここでは,本研究者によって確立されている無限次元線形行列不等式に基づく制御系の解析設計法を応用した.最後に,構成された制御の性能検討をおこなった.特に,本研究の後半では,実際の構成において現れる情報遅れの問題の検討に重点を置き,提案法の理論的な可能性,限界を明らかにした. 本研究の前半での成果は次のように要約される.非線形性や不確かさのため正確なモデリングが困難な電気油圧サーボ系の最適制御設計を目標にして,いくつかの動作点の近傍での局所的なモデルを作成し,負荷変動をパラメータとするLPVシステムを用いて,最悪外乱を想定した最適速度制御および最適推力制御を構成した.実機試験により提案手法の有効性を確認できた.一方,入出力の大量データベースに基づくオンラインモデリング手法の提案と単純最適化モデル予測制御理論を提案し,シミュレーションによる検証をおこなった.この成果については2002年度自動制御連合講演会で途中経過の発表はおこなったが,現在,実プラントでの実証に着手しており,その成果も含めて発表予定である. 本研究の後半での成果はつぎのように要約される.局所モデルによる全体システムの制御を構築する際に問題となる状態変数における遅れ,入出力変数における情報遅れの克服を検討した.制御器構成のための最悪外乱に対する最適制御構成のための有限次元アルゴリズムの提案と有効性の実証,入力変数の情報遅れを考慮した場合の最悪外乱に対する最適制御制の予測・オブザーバ構造の解明をおこなうことができた.
|