研究概要 |
建設分野では,コンクリート構造物の耐久性向上の社会的な要請に答えるため高流動・高強度・高耐久コンクリートが今後の主力な技術となることが予想されている.この際,ポリカルボン酸系と総称される櫛形高分子系分散剤を主成分とする高性能AE減水剤が重要な役割を演じる.本研究ではコンクリートの流動性制御を目的とした材料要素技術の体系化を計るための基礎的なデータの蓄積と体系化を目的とし,高性能AE減水剤の主成分である,ポリエチレンオキシドをグラフト鎖とする櫛形高分子の吸着・分散機構に及ぼす分子構造の影響を検討した.また,セメント中の微量成分である無機電解質の流動性に及ぼす影響と櫛形高分子の分子構造の影響について検討し,さらに,セメント系材料の初期水和を支配するCa_3Al_2O_6-セッコウ系の初期水和への高分子の影響を明らかにするとともに,その水和制御方法についても提案した.さらに,産業副産物の有効利用とその機能性に着目して,高炉徐冷スラグの流動性保持効果についても明らかにした.また,混和材や骨材からの混入が予想される未燃焼カーボンや粘土鉱物の影響について明らかにした.以上の結果から,微量成分である無機電解質の影響を受け難い分子構造としては,従来のものにスルホン基を有するモノマーを導入して吸着基を増加させ,硫酸塩の場合には,ある程度のグラフト鎖長を有した櫛形高分子が効果的であることを明かにした.また,高性能AE減水剤の添加は,Ca_3Al_2O_6-セッコウ系の初期水和を促進させるが,その制御には,セッコウの種類も重要であるが,遊離石灰量を増加させる方が有用であることも明らかにした.また,膨張材も制御に役立つが鉱物組成の選定が重要であることを指摘した.さらに高炉徐冷スラグ中に含まれるチオ硫酸塩がCa_3Al_2O_6-セッコウ系の初期水和を抑制することも明らかにした. 以上のように,コンクリートの流動性制御のための,セメント系材料と高性能AE減水剤に関して有用な知見を得ることができ,さらに,これらをまとめて流動性制御のための材料要素技術を体系化ができた.
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