研究概要 |
本研究においては,鋼床版舗装に発生する表面縦ひび割れ(LSC)の発生原因について,現場調査,材料試験および数値シミュレーションによって検討した. 1.現場調査 首都圏内の主要な鋼床版舗装について,継続的に路面観察を行った.その結果,LSCは多くの鋼床版舗装で観測され,主な破損モードであることが判明した.また,従来の認識とは異なり,腹版ウェブや縦リブウェブ直上のみならず,ウェブの間にも多く見られた.場合によってはウェブ直上よりもウェブ間のほうが早期に発生するものも観測された. 2.材料試験 通常のアスファルト舗装にも表面縦ひび割れが発生するが,これも鋼床版舗装におけるものと同様のメカニズムではないかと考えている.そこでは,高温時に表面に発生するマイクロクラックが原因の1つであると予想している.ただし,このようなマイクロクラックがすべて縦ひび割れに成長するのではなく,タイヤの転圧やニーディング作用を受けて,クラック破断面のアスファルトモルタルの偽着作用により1部は消滅する.このような作用をヒーリング作用と位置付け,アスファルト混合物のヒーリング特性を評価する実験的手法を開発した.本実験法によって,載荷時間,温度およびアスファルト混合物の劣化が,表面縦ひび割れの発生原因の1つであることを明らかにした. 3.数値シミュレーション 本研究においては,鋼床版舗装の構造解析モデルとして,角柱要素と帯板要素をリンク要素で結合して,鋼床版と舗装の両者を同時に扱える有限要素法を開発した.また,アスファルト混合物の粘弾性挙動を取り扱うために,Burgerモデルを用いた中心差分形式の動的粘弾性解析に拡張した. 鋼床版舗装の早期の表面縦ひび割れについて,アスファルト混合物の引張ひずみ規準に基づいた疲労解析によってその発生原因の究明を試みた.その解析から,腹板ウェブや縦リブウェブにおける表面縦ひび割れの可能性については指摘できたが,縦リブウェブ間に生ずるひび割れについては説明することができなかった.そこで,新たに姫野によって提案された散逸エネルギー規準に基づいた疲労解析を実施し,縦リブウェブ間に生ずるひび割れの発生の可能性について検討を行った.その結果,腹板ウェブのみならず,縦リブウェブ間にタイヤが作用した場合においても疲労度は早期に大きな値を示すことが判明した.
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