研究概要 |
観測地震動に基づいて動的地盤特性を推定しようとする従来の研究では,鉛直アレイ観測が行われていることを前提条件としており,計測震度計やK-NETのような表層記録のみしか得られていない地点での逆解析は行われていない.本研究では,表層の鉛直動あるいは遠方の基盤および露頭岩盤での記録に補正を行うことによって入力地震動を生成し,地震観測点の深さ方向の動的地盤特性の逆解析を試みた.この逆解析手法を,申請者らが福井平野に展開している強震観測点に適用した結果,地震に関わらず安定して対象地点の堆積層厚などが推定できること,推定された構造は既存の弾性波反射探査などとの結果と矛盾のないことが確かめられた.6箇所の強震観測地点に対する多数の観測地震動に基づく逆解析から,推定値の信頼性に関する情報も含めた福井平野の東西断面の地盤構造が提案できた. 一方で,福井平野を1分ごとの230個のメッシュに分割し,各メッシュで常時微動測定を行った.はじめに強震観測点での常時微動のH/Vスペクトルおよびフーリエスペクトル特性について,強震データとの比較を行った結果,両者の対応は良好であることを確かめた.また,確定された卓越周期およびH/V倍率と,深さ方向のS波速度モデルを仮定することによっては,沖積層および洪積層厚を推定し,福井平野全体の堆積構造モデルを求め,既存のボーリングデータ,弾性波探査結果ならびに重力異常などとの相関性が非常に高いことを確認した.強震観測からの推定構造を基本とし,常時微動からの堆積構造を補完的に利用することにより,地震被害予測に不可欠な地域の3次元動的地盤構造を,低コストかつ高い信頼性で評価することができる見通しが得られた.
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