研究概要 |
3カ年の研究期間にわたり地盤構造急変箇所を含む不整形地盤の地震応答解析プログラムの高度化をすすめるとともに,短周期表面波と直達実態波との干渉を詳細に解析するアルゴリズムを開発した.成果は年度ごとに各所で発表することに務めた.特に,最終年度では成果を冊子の形でまとめた.短周期表面波と直達実態波との干渉における検討では各種の条件によるシミュレーションから条件次第では予想を越える長周期(1〜3秒)の合成地震動が生じ得ることを発見した.このような長周期の地震動発生は入射波の周期特性とは無関係に短周期表面波を発生する不整形構造の構造と入射波の入射方向との関係に大きく依存することが明らかになった.すなわち,短周期表面波キラーパルスとも呼べる地震被害の鍵を握る現象が不整形地盤の地震応答に存在し得ることが新たなテーマとして浮かびあがった.このような現象把握は2003年に東北地方に相次いで発生した被害地震の調査活動とこれまでの本研究課題のシミュレーションから得られたものである. 解析の高度化とともに進められた設計への導入のテーマではテストサイトとして仙台市圏における実際の不整形地盤を対象に検討すすめた.線形問題の範囲内では仙台市圏のアレー地震観測システムSmall-Titanによる実測結果を説明可能であることから,設計基準への短周期表面波の導入が可能であるとの結論となった.しかし,これをまとめる段階で,並行して進めた実際の不整形地盤における非線形応答解析が膨大な計算処理時間を要すること,現在の研究担当者が有するコンピュータシステムでは実現困難であることが明らかとなった.これを解決するにはコンピュータ設備の更なる充実と解析コードの効率化が必須である.このため,本研究課題は15年度をもって終了したが,これを発展させる新たな科研費研究プロジェクトを16年度以降の研究テーマとして申請した.
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