研究概要 |
(1)均質な不飽和供試体を簡便に作製するため,水分保持特性試験に用いられてきた加圧膜法を用いる方法を提案し,その有用性と限界を調べた.数種類のメンブランフィルターの中から,孔径2μmのセルロースアセテートタイプのものを採用した.その空気侵入値は24kPaであり,砂,シルト,粘土の供試体に対して水分保持特性試験を行なったところ,どの供試体に対しても加圧板法とほぼ同じ特性曲線を得た.しかし長期試験には適していないことがわかった. 加圧膜法によって作製した供試体各部の含水比を調べた結果,そのばらつきは少なく,十分均質な供試体が得られていることが確認できた. (2)供試体作製容器は,当初,供試体4本分を一度に作製できる内径170mmのものを使用していたが,低塑性土では取り扱いが困難な場合があり,供試体1本分を作製する内径75mmの小型のものを製作し,使用したところ良好な結果を得た.現在ではもっぱらこちらを使用する状況である. (3)加圧膜法による供試体作製は,予圧密法では自立困難な低塑性土に対して有効であり,供試体作製後吸水させることによって,良質の飽和供試体を得ることができる. (4)サクション履歴の有無による飽和供試体の圧密非排水三軸圧縮挙動への影響について調べた結果,強度線は両者で同じとみなせるが.有効応力経路はサクション履歴のあるものの方が立っていて過圧密土の経路に類似しており,サクションが擬似過圧密的な効果をもつことがわかる.パラメーターX=1として有効応力経路から求めた不飽和土の強度線を描いてみると,せん断抵抗角はサクションによらずほぼ一定値であるが,見かけの粘着力項はサクションが大きいほど大きい. (5)一軸圧縮試験供試体が何らかの原因(かく乱)によって不飽和になった場合を想定して,不飽和供試体に対して,三軸試験機を用いて,供試体の体積変化とサクションをも測定できるようにした一軸圧縮試験を行なった.一軸圧縮試験はせん断速度が大きいことから非排水条件下にあるが,吸排気により無視できない大きさの体積変化を生じ,体積一定とは程遠い状況にあることがわかった.
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