研究概要 |
この研究は,3つの段階から成り立っている.すなわち,(1)pH<5の建設発生土を活用するにあたって生化学的に処理可能な状態,言い換えれば,短期間で酸化を完了させる最適pH条件の把握,(2)ボーリングコアの物理的・化学的不連続面の痕跡にもとづく,酸性土斜面の崩壊メカニズムの明確化および(3)pH<5で,かつ,有機物含有量>8%の土に牡蠣殻の焼成,水和により得た水酸化カルシウムを添加した場合の安定処理効果の確認である. これらを追究するために実施した各種の室内試験および現地調査から,次のような成果が得られた. 1.滅菌試料と非滅菌試料のpH,硫酸イオンの濃度変化を比較した結果,パイライトの酸化過程には硫黄酸化細菌よりも鉄酸化細菌の関与が重要であること,さらに,生化学的な酸化を早期に完了させるための最適pHは2.5〜3.5であることが明らかになった. 2.直径約65mm,長さ約12mのボーリングコアを100mm間隔に切断(92試料)してそれぞれのpH,含水比,電気伝導率,強熱減量を測定したところ,コアには物理・化学特性の異なる不連続面が存在し,この面で斜面崩壊が発生した可能性の高いことを見い出した. 3.牡蠣殻由来消石灰の品質を市販の工業用消石灰と比べても遜色がなく,また,破砕した殻片を同時に混入(対象土の乾燥質量比の3割以下)しても気中強度が低下する兆しは認められない.一方,水浸強度は半減するものの供試体の変形係数の大小には関与しない.
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