研究概要 |
清澄な水が豊かなに流れる河川に親しむ人々が増えているが、河川の自然を安全に楽しむには水難の危険性とそれを回避する術を適切に認識・把握することが求められる.現実には,水難事故は後を絶たず,その背景には,そこが何故,また,どのように危険であるかの物理的根拠の不明確なことがある.本研究では,岐阜県下の河川を対象に水難事故個所の分析を行って事故が頻発する水難危険個所の特徴を把握し,水理特性と水難危険性との関係把握のために現地調査地点を選定して,現地観測と流れの数値シミュレーションを行い,利用者の遊泳能力等とを比較して事故防止に役立つ知見を見出し,効果的な情報提供方法を考察した.以下に主な結果を示す. (1)平成10〜15年について,河川水難事故例を新聞記事や警察白書から集め,聞き込み調査して事故地点の特徴を調べ,車の乗り入れ可能な彎曲部であって、流れが緩やかな場所から急な瀬を経て外岸の渕に集中する河道の状況が川原から確認し難い地点で事故が多発していることを見出した.これから,関市池尻地先と岐阜市千鳥橋上流の長良川河道を調査対象地点に選定した. (2)上記2地点において,観測ボートシステムに音響ドップラー流速分布計とGPS装置を搭載して河道形状や流れの精密な測定を実施し,流量50〜60m^3/sの低水時でも水深10mを越える岩場近辺の渕では流速1m/s以上の流れと複雑な渦があることを見出し,測量による詳細な河床形状を与えるとその流れが2次元浅水流モデルでよく表現されることを確認した. (3)水中歩行能力や着衣時・非着衣時の遊泳能力の資料に基づいて平水時の流れについて6段階の危険度評価を行い,調査地点が広い範囲で高い危険度を有し,僅かな増水によって危険領域が増大することを明らかにして,この状況を橋脚面の標示等,利用者自らが判断できる情報として提供する方法を示した.(785字)
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