研究概要 |
通常の沿岸域(陸棚のスケール10km以下)における波群の伝播距離は波群長の数波長以内であり,かつ伝播過程において相対水深khの値は減少し1.36を通過する変形形態をとる.本研究では,傾斜海浜上を伝播する種々のスペクトル形状をもつ波群の変形を,1/30勾配斜面を用いた系統的な水理実験により調べて,特に個々波の波形勾配が大きく非線形性の強い波群の相対水深kh>1.36からkh<1.36の浅海領域に至る伝播変形特性について以下を明らかにした. 1.入射波として2成分合成波(sin型波群),2成分合成波のものとスペクトル形状が異なるが同じ波群形の2種類のsin型波群,ガウス分布形および3角形状スペクトルの計5種類の波群の伝播変形を斜面各点に設置した波高計とデジタルビデオカメラにより計測し比較した.その結果,波群中の最大振幅についての波形勾配が0.25以上となるような高波浪時の入射波群については,初期スペクトル形状により浅海域における波群形は大きく異なり,スペクトル幅が広い(波群を構成する成分数が多い)ケースでは包絡波がより扁平化することがわかった.また,2成分合成波については,中間水深において低周波数側の成分が増幅し,高周波数側が減少する変調が見られた. 2.上記の波群変形はCSE方程式では波群の非対称性を再現することができないこと,およびBoussinesq方程式およびその修正方程式によっても深海および中間水深における伝播変形を再現できないことが明らかになった. 3.3次オーダーのZakharov方程式をモデル方程式として,実験結果の再現性,特に波形勾配が大きい入射波群の伝播変形に対する適用性について検討を加えた結果,砕波点付近の極浅海域を除いて,スペクトル変動を精度よく再現できることがわかった.
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