研究概要 |
本研究では,河川や海岸における混合粒径の土砂粒子に見られるような,乱流中に存在する数密度の高い多成分粒子群(粒径や比重などの物性値が均一でない粒子の集まり)の輸送現象,一様分散あるいは分級・偏析現象を精度良く再現できる予測手法を開発することを目的として,主として並列計算法を含めた数値解法と数値モデル,そしてそれらの適用性に関する基礎的な面からの検討を平成13年度と14年度の2年にわたり実施した.平成13年度には,乱流中に含まれる個々の固体粒子の運動を解析するための数値モデルと並列計算手法について考察を行い,固気および固液混相流を対象とした数値計算を行った.その結果,水平および傾斜した回転円筒中における粒径と密度が異なる二成分粒子が混合,あるいは偏析する状況が数値計算で適切に再現できることが確認された.また,固体粒子を含む噴流の乱流計測を行い,乱流変調の特性を定量的に把握した.平成14年度には,実際にPCクラスタを用いて並列計算特性を把握するとともに,粒子パスライン等を用いた数値可視化手法を整備した.さらに,水理構造物前面に生ずる混合粒径土砂の分級堆積現象へ手法を応用した. 以上のような検討により開発された解析手法の特徴は以下のように要約される.(1)多成分粒子群を構成する各粒子に対して,3次元並進・回転運動の支配方程式を解析する個別要素法により,粒子間および粒子と境界面との接触力が正確に扱われる.(2)液相乱流場は,固相の影響を考慮した二流体モデルに基づき,その乱流モデルを導出してこれを解析モデルとしている.(3)乱流状態にある液相と粒子相との相互作用が考慮されたtwo-way modelである.(4)計算領域をサブブロックに分解する領域分割法による空間的な並列化と,液相と固相の計算を同時に進める相間並列化という,2レベルの並列計算手法を導入し,多数の粒子を扱う高効率の計算が実行可能である.(5)領域分割法の特徴の1つである,複雑形状領域(実際の分岐水路や土砂バイパス等)への適用性が優れている.(6)粒子の分布状況や,粒径ごとの粒子のフローパターンを可視化することが可能であり,この機能により粒子の混合あるいは分級状況を把握することができる. 実際の水理構造物近傍で生ずる土砂堆積現象への適用性を確認するため,開発された手法を用いて,構造物前面に生ずる混合粒径粒子の分級堆積現象の計算を行った.この現象に対する基礎水理実験を合わせて行って,計算結果を実験結果と比較した.その結果,水理構造物前面で発生する可能性のある分級堆積現象がほぼ適切に再現されることが示されている.
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