研究概要 |
近年,都市の交通需要を適切に管理する目的のもとに,各地でさまざまな社会実験が試みられている.その結果について,ある場合は相応の効果が認められたと報告されているが,別の場合必ずしも有効ではないと見られるものがある.これは,社会実験が短い試行期間に限られているという事情のほか,通勤者のおかれた社会的な条件や生活上の必要性を的確に考慮していないためである可能性がある。研究者らは,これまで交通行動が24時間の生活サイクルのもとで行われることに着目し,その効果を表現するモデル化の方法を検討してきた.本研究は,主としてパークアンドライド,ライドアンドライドを念頭に,24時間生活サイクルのもとで行われる時間領域の行動モデルと,それに基づく経路・モードの選択行動モデルを作成し,交通需要管理施策の評価に適用しようとしたものである.本研究によって明らかとなったのは、以下のような点である. 1)通勤者の時間領域の行動(出・退勤時刻の決定)は,出勤時の遅刻確率を測度とする非効用を用いて記述することができる.出勤と退勤における非効用の相対的な重みは5:1の程度である. 2)通勤交通のモード選択には,出・退勤の時間領域で定義される非効用とともに,交通手段に応じた消費時間の「質」を考慮する必要がある. 3)P&Rなどの管理施策には,通勤者の日々の支出である駐車料金を的確に制御することが重要である.
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