研究概要 |
本研究では,VICS情報提供下での交通ネットワークフローの予測,および便益評価モデルの開発した.ここでは,ドライバーを交通情報利用と非利用のセグメントに分割し,これらの経路選択規範の相違を考慮に入れた多種流ネットワーク均衡解を求めると同時に,VICS情報の均衡利用率を推定する[MUSE/ATIS](Multiple User Stochastic Equilibrium with ATIS Demand)モデルを構築した.このモデルは情報利用率変動型の多種流確率均衡配分モデルであり,この需要予測モデルに論理整合した便益計測法によってVICSの効果を評価することが可能である. 次に,2001年に実施した「VICSの導入効果に対する調査」から得られたVICSに対する支払い意志額データを用いて道路交通情報提供の価値を評価し,ネットワーク全体における利用者便益の推計を試みた.さらに,[MSUE/ATIS]モデルを実道路ネットワークに適用するためには,モデルに含まれる知覚所要時間の分散パラメータとATIS情報利用率モデルのパラメータをあらかじめ推定しておかなければならない.本研究では,観測交通量に最も適合する知覚経路所要時間の分散パラメータと,VICSの導入効果に関する調査データから推定される支払意志額モデルによるWTP推定値を用いて情報利用率パラメータを特定化する方法を提案した. これらを用いて熊本都市圏道路ネットワークにおけるATIS導入便益の試算を行った.また,どのような交通特性を持った地域により高い道路交通情報の導入効果が生じるのかを検討するために,別途,西遠都市圏道路ネットワークにも適用して,それらの効果の比較・考察を行った.その結果,交通混雑力激しく,平均トリップ時間の大きな地域ほどATIS導入はより高いことなどが実証的に明らかになった.
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