研究概要 |
内分泌撹乱作用が疑われるアルキルフェノール(AP),とくにノニルフェノール(NP)について,合流式下水処理場におけるAPの実態調査を実施し,またいくつかの下水処理場の処理水が流入している多摩川におけるAPの調査も含め,動態解析を行った。 合流式のA下水処理場の流入水には,晴天時で4-tブチルフェノール(BP)が0.1-0.2μg/L,4-tオクチルフェノール(OP)が0.2-0.4μg/L及びNPが2.8-7.5μg/Lの範囲で検出された。OPとNPの大部分は浮遊物質に吸着されていた。汚泥処理工程からの返流水はOPが0.8-1.7μg/L及びNPが18.6-44.2μg/Lであった。一方,処理水ではOPが0.0-0.1μg/L及びNPが0.7-1.4μg/Lであり,流入下水と返流水を合わせた総流入に対して,平均除去率はBPが100%,OPが75%及びNPが85%であった。一方,雨天時での調査によると,たとえばNPが晴天時の濃度に対して流入下水で3.1倍,処理水で1.6倍ほど高くなっていた。 また,余剰汚泥にはOPが0.07-0.26μg/g DS及びNPが0.86-3.57μg/g DS,余剰汚泥と初沈汚泥の混合汚泥ではOPが0.02-0.06μg/g DS及びNPが0.39-1.86μg/g DSの範囲で含まれ,余剰汚泥は混合汚泥の2-3倍高い濃度であった。 多摩川(府中四谷橋付近)の河川水に含まれるNP濃度を調査した結果、NPが0.0〜0.2μg/Lの範囲で検出された。本調査の流域においては、前日に降雨があると河川水のNP値はかなり高くなり、最大で晴天時の3倍以上のNP値が検出された。 以上,合流式下水処理場においては降雨によりNP濃度が流入・流出ともに高くなる傾向があり,都市河川である多摩川でも河川水のNP濃度が降雨の影響を受けることが明らかになった。
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