研究概要 |
「3次元都市モデル(空間データ基盤)」は、我々が住む現実世界の建物や道路、川といったハードウェアを、コンピュータの世界に写像するものである。高層化や地下化が進み,3次元的な広がりを見せる都市を,「3次元都市モデル」はコンピュータの中に再構築し,都市計画や景観設計,土木,建築,交通工学,教育,防災といったアカデミックな分野の活用から公共事業の情報公開,まちづくりへの市民参加の場として,あるいは,ゲームやアミューズメントの分野での活用など広範囲の分野で様々な利活用が期待される重要な「情報基盤」である。 しかし、現状では、その3次元CG都市モデル構築のためのデータ取得やモデル作成には,3次元CGソフト等を使った多くの手作業を行う必要があり、多大な労力と時間がかかる。本研究では、「3次元都市モデル」の中で建物と道路の3次元概形モデルを、GIS(地理情報システム)とCG(コンピュータ・グラフィックス)を統合化して、自動生成することに成功した。本システムでは、GISが管理する電子地図上の建物や道路といった地物が持つ図形情報と属性情報に基づいて、3次元都市モデルを自動生成する。本システムは、市販のGISと開発した「GISモジュール」と「CGモジュール」から構成される。建物概形モデルを生成する場合、GISが管理する電子地図上の建物境界線ポリゴンに対して、「GISモジュール」は、不要な頂点のフィルタリング、基本ポリゴンへブレイクダウンするためのポリゴン分割、壁や窓部を生成するための輪郭線生成などの加工処理を行う。「CGモジュール」は、GISモジュールから前処理された地物の図形情報と階数、屋根の色、建物のタイプ(切妻屋根または寄せ棟屋根等)の属性情報を受け取り、それらに基づいて、建物モデルを自動生成する。 本システムでは、自動生成の基礎データとしているものは、ポリゴンやポリラインの2次元図形特報と属性情報であるため、その2次元形状から3次元の地物の形状を推定することになる。建物を生成する場合、2次元の建物境界線であるポリゴンとそれに関連付けられている建物階数や建物タイプ等の属性情報を使って、建物の屋根の方向や位置等の3次元形状を推定して、モデルを自動生成する。このプロセスでは、建物を色々な角度で写真撮影し、得られるステレオ画像を使って推定する3次元形状情報を使用しない。本システムは、建物を1軒1軒、色々な角度で写真撮影し、3次元形状を推定するという手作業をせずに、2次元建物ポリゴンから最もprobableな3次元建物形状を推定する。本研究では、2次元図形情報とその属性情報から最もあり得る3次元形状モデルを生成し、形状を修正するための作業をできるだけ少なくするようなアルゴリズムを提案する。労力とモデルの精緻さはトレードオフの関係にあるが、都市計画において利用される「3次元都市モデル」としては、容積率や建蔽率、斜線制限で大まかな形状が決まる建物概形モデルで十分であり、本システムは代替案制作のための時間が短く、代替案に対する変更や要望に対応して、モデルを非常に効率的に自動生成する。本研究の成果を国際学会、国内の各種の学会で発表、査読論文として採録され、評価された。
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