研究概要 |
近年,高層の鉄筋コンクリート造集合住宅などに使用される例が増加している高強度コンクリートは,普通強度のコンクリートに比べ単位セメント量が多いため,水和熱の蓄積により材齢の初期に高温履歴を受け,また,セメント量に対する水分量が少ないことから水和反応に必要な水分の条件が異なることなどが強度発現に影響を与え,普通強度のコンクリートとは異なる強度発現特性を持つ。しかし,高強度コンクリートの強度発現に及ぼす温度および水分の影響については不明な点が多い。そこで,本研究ではこれらの影響を明らかにするため,湿潤条件が高強度コンクリートの強度発現に及ぼす影響を異なる湿潤条件下においた供試体を用いて実験し,また,比較的断面の大きい柱などの部材を想定した模擬部材を作製し,熱電対およびセラミックセンサーを用いて温度ならびに部材内部での水分の挙動について実験を行った。その結果を以下に記す。 (1)相対湿度が低い養生ほど長期材齢における強度発現は停滞する。 (2)高強度コンクリートでは,湿潤養生による含水率への影響は小さい。 (3)セメントペーストの生成速度をコンクリートの含水量,未水和セメント量および生成したセメントペーストで表し,強度発現を算定する式を提案した。その式においては,高強度コンクリートほど未水和のセメントおよび含水量が多く残っている状態で水和反応が停滞する傾向にある。ただし,高性能AE減水剤を用いると,その傾向は緩和される。 (4)部材表面部の乾燥によって,水セメント比の大きいコンクリートほど表面部で質量含水率の低下が大きくなる。 (5)部材中で高温履歴を受けるとき,水分は単に水蒸気分圧の影響で表面部に移動するだけでなく,中心部での急激な水和反応によって,中心部に向かって移動する傾向も認められ,その挙動は複雑であり,長期材齢では高強度コンクリートほど中心部と表面部の圧縮強度の差が小さくなった。
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