研究概要 |
本研究は,連続引抜成形繊維補強ポリマ(FRP)形材を対象とし,その大スパン構造への適用性を分析したものである。大スパン構造形式としては,学校体育館に採用される剛接合単層ラチスシェルを解析対象とした。まず,剛性に関する部材実験並びに線形応力解析を実施し,たわみの比がヤング係数比ほどは大きくならないことを明らかにした。次に,非減衰自由振動解析を行い,剛性が異なっていても形状が同じであれば,固有振動数や固有モードの変化は極めて小さく,剛性の相違による固執振動数の変化が剛性比から近似的に簡単に予測できることを明らかにした。更に,地震観測記録加速度波を用いた線形応答を行った結果,母線方向部材には軸力がほとんど生じないことや,断面寸法の変化に対する地震応答性状の変化が極めて小さいことを指摘した。一方,アーチ方向斜材に関しては,素材の違いによる地震応答性状の変化は極めて大きいことを論じた。最後に,FRP形材を用いた大スパン構造と従来の鋼形材を用いた大スパン構造との比較を行い,地震応答性状は,ヤング係数の低下と質量の減少に依存して変化するものの,卓越する振動モード,軸力,曲げモーメント,加速度,速度の分布性状は極めて類似であることを示した。すなわち,繊維体積含有率を上げることや,高剛性・高強度のFRPを部分的に採用することなどによって,構造部材の断面積を大きく変更することなく,地震動による応答量を小さく抑えることができることを示唆した。
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