研究概要 |
小鉄骨を鉄筋コンクリート断面の中心に配置した芯鉄骨合成断面柱と鉄筋コンクリート梁で構成される骨組を設計する場合,柱梁接合部には梁の主筋が密に配筋されている状況であり,芯鉄骨を柱梁接合部内に貫通させることは難しい.そこで,本研究では,柱梁接合部に芯鉄骨を貫通させないことを基本と考え,平成13年度に十字形架構に地震時応力に対応する荷重を載荷する実験を行い,その実験の結果より以下のことがわかった.芯鉄骨を補強することなく,柱に挿入した場合,芯鉄骨の軸力負担能力にはばらつきが大きく,芯鉄骨に所定の圧縮軸力が伝達できる場合には骨組は優れた耐震性能を発揮するが,柱梁接合部のコンクリートが支圧破壊し,耐震性能に劣る挙動を呈した試験体もあり,芯鉄骨の圧縮軸力伝達の確実性が見られなかった.平成14年度は,芯鉄骨の挿入条件を主な実験変数に取り,4体の十字形架構の載荷実験を行った.挿入条件として,1)芯鉄骨を柱梁接合部に貫通させず,芯鉄骨端部無補強のもの,2)1)の条件で,コンクリートの支障面積を増やし,支圧破壊を防止することを目的として芯鉄骨端部に鋼板プレートをつけたもの,3)芯鉄骨を柱梁接合部に貫通させたもの,の3種類を選んだ.柱の軸力は,高軸力下での骨組の挙動について調べる目的のため,断面圧縮耐力の40%の軸力を載荷している.実験結果より以下のことがわかった.芯鉄骨を柱梁接合部に貫通させた試験体は,実験終了の層間変形角が4/100rad.まで安定した挙動を示した.芯鉄骨端部に鋼板プレートを付けた試験体は芯鉄骨を貫通させた試験体の変形性能には及ばないものの層間変形角2.5%まで芯鉄骨は圧縮軸力を保持でき,芯鉄骨を貫通させた試験体とほぼ同様の耐震性能を保持できた.さらに,芯鉄骨の負担軸力が常に無補強の試験体に比べ,1.3倍程度あり,芯鉄骨を貫通させた試験体とほぼ同程度の軸力を負担していた.これらのことより,本補強法の有効性が示された.
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