研究概要 |
ピロティ階などを有し層崩壊の危険性のある鉄筋コンクリート(RC)造建物の耐震安全性を向上させるために,既存RC造建物の構造調査や,既存ピロティ建物の耐震性能に関する構造解析,耐震補強や新築建物の耐震要素としての利用を目指したコンクリートブロック(ブロック)壁体を用いた耐震壁の実験を行った。 大分市における調査ではRC造建物の約20%がピロティを有していることが確認された。ピロティ建物の割合が全国で最も多い沖縄県では新耐震設計法施行後も依然としてピロティ建物が高い割合で建設されていること,また沖縄県では間仕切壁にブロック壁体が多用され,ピロティ建物においても上階のブロック壁体の剛性や耐力を無視した構造計算が行われていることなどが明らかとなった。 大分市内の既存ピロティ建物に対する耐震診断や静的漸増載荷解析および地震応答解析の結果から,完全なピロティや1階片妻構面に壁が配置されたピロティの建物では大地震時に限界層間変形角を超える応答が生じる場合が多いことなどが明らかとなった。 ピロティを有するモデル建物を設定し,耐震診断や静的漸増載荷解析および地震応答解析により耐震補強効果の検討を行った結果,耐震補強要素を偏心のない配置とした場合には,比較的少ない投入量でも目標の耐震補強効果が得られることなどを確認した。 RC造フレーム内にブロック壁体を先積みまたは後積みした耐震壁試験体に対する静的水平力繰り返し載荷実験の結果から,全充填型の型枠ブロック壁体を用いた場合,先積みでも後積みでもRC造耐震壁と同程度の最大耐力を発揮できること,部分充填型の空洞ブロック壁体を用いた耐震壁は型枠ブロック造およびRC造耐震壁と比較して70%程度の最大耐力を有することなどが明らかとなった。
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